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遠い昔に読んだ本の中の話のようだ
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「芦原すなお / 東京シックブルース」

春から大学でドイツ文学を学ぶために上京した葉上容一だが、時はまさに学生運動の時代、教室はクラス討論の場と化していた。年上だけど小説家を志す向井、いつも黒いセーターを着た活動家の武田。主人公に思いを寄せる初見さんや、主人公が思いを馳せる篠崎さんとその許嫁の樒(しきみ)さんとの出会いなど、個性溢れる登場人物の中に自我を芽生えさせる容一の成長話。といってもそんなに分かりやすい変化をするわけじゃないけど

この人の本は初めて読んだんだけどすごく面白かった。
時代は学生運動が盛んだった69年だけど、内容はそんなに難しいものではなかった。
ドイツ語の使い方がちと鼻についたけど、それも時代を表現させるための手法なのかな。
色んな人が出てきて、それぞれの価値観や苦しみをじゃんじゃんぶつけてくる。そうゆう時代だったのかな。

なかでもドキドキさせられたのは、主人公容一と篠崎さんの恋の行方。
間違いだと分かってても破滅する道を選んでしまう人間の悲哀。別れを受け入れる事が若さであり青春なのだ。だって。
しかし映画のマイ・バック・ページでも書いたけどこの頃の人たちは昼間っからビール飲んでる。
夜になったらウイスキーをあおっている。そしてみんなハイライトを吸っている。本当なの?

終わりに近付くにつれてだんだんと重さを増していく、これで終わったら救いがないなあと思った。
これで主人公死んだりしたら嫌だなあとか思いながら読んだけど、そんな安易な終わり方ではなかった。
最後は雲のすき間から光が射したような感じ。ハッピーエンドとは言えないかもだけど明るい未来が待ってるような。
良い小説だった。他のも読んでみたい。

生物学の授業で教授が話していた事。すごく長いので端折ってるけど引用。

「光合成とはすばらしい作用だよ、みなさん。光が闇の中に輝き出して命のもとを作るんだよ。みなさんはそれを学校で習って、覚えてそれを当たり前のことと思っでいる。だけどね、これは当たり前のことじゃないですよ。ものすごいことですよ。それをすごいど思わないということは、自分が虫や犬や猫と同じく、人間という一つの生き物だというこどを忘れているんだよね。賢くなったようで、それは馬鹿になっているの。生き物にはいろんな能力があるど言ったけど、人の能力の中には、たとえばこの光合成を、ああ、素晴らしいなあ、と思う力があります。この、自然の営みを素晴らしいなあ、と思える能力は、生き物の中で人間がもっども優れているかもしれない。賢くなっちゃって、生き物の生き方自体の素晴らしさを、当たり前のこどとしか見られない人は沢山います。これからどんどん増えそな勢いで、なんとも困ったことだと先生は思う。いいかい、みなさん、どうか自分が一個の生き物だということを、そして、この世界の成り立ちは、決してデタラメなんぞじゃねえ、ということを忘れないでね」

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The End_531 原町 / Nikon F3 「tumblr」「THE END」「Trinograph.」「Facebook」「twitter」「Flickr」
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