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涸れ井戸になげる石
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「ミクロの決死圏」

「村上さんのところ」を読んでいて、音楽の話と同じくらい映画の話が多かった。
小説の中で映画の話は音楽の事ほど出てこない気がする。俳優名は出てくるか。あ、いやそんな事ないかな?わかんない。
とにかく村上春樹は「真昼の決闘」と「静かなる賭け」が好きらしい。それとこの「ミクロの決死圏」
「1Q84」でも青豆さんがみてたので興味が出てきて、僕もみてみた。1966年のアメリカ映画です。

物質をミクロ化する研究が行われていた。現在の技術ではミクロ化は1時間が限度で、それを過ぎると元の大きさに戻ってしまう。この限界を超える知識を持った東側の科学者を、アメリカは亡命させた。しかしその際に敵の襲撃を受け、科学者はそのせきで脳内に血塊ができてしまい意識ふめいとなる。科学者の命を救い技術を手に入れるために、医療チームを潜水艦にのせ、ミクロ化し科学者の血管にから体内に入る。そして直接脳内の血塊を治療することにする。制限時間は1時間。決死の冒険が始まる。

あらすじどおりだけど、潜水艦ごとミクロになって頸動脈から注射して人体に入り込む。
そして動脈の流れにのり、脳にある血の塊をレーザービームで溶かして消滅させる。その後静脈を下り、また注射器で吸い出さられる。
尋常の沙汰ではない。1時間を過ぎるとだんだん元の大きさに戻るので、人体が潜水艦を異物とみなし、白血球や抗体に襲われる。かなりエキセントリックな設定。
でもこのぶっとんだ設定が面白かった。もちろん1966年の映画なのでCGなし。舞台セットで人体の中を表現している。それは微笑ましくもあった。

この時代の映画の変わった乗り物は、大体が核燃料で動いている。この潜水艦もそうだった。
それはいつもシリンダー状のカプセルのようなものに保管されていて、かなりコンパクトなもの。
これは冷戦の意地の張り合いみたいなものが見え隠れする。あらすじにもそんな雰囲気がある。
核に対してもこっちはこんなに技術が進んでるんだからな!すごいだろ!という主張が。笑。

突っ込み所はかなりある、潜水艦に乗り込んでからミクロ化し、小さくしてから注射器に運ぶまでに、フォークリフトみたいなもので運ぶ。
フォークリフトの先で注射器と、小さくなった潜水艦をドッキングする。なぜそんなビックリ人間大賞みたいなことをする必要があるのか。
そしてその微妙な位置の調整をしてる人が別にいて、フォークリフトの運転手に手動で「もうちょっと前、あ、行き過ぎ」みたいに指示する笑。
体内に入った瞬間に急にてパニックになったクルーがいて、抑え込んで話を聞くと「おれ閉所恐怖症なんだ」とか言いだす。先に言え笑

物語設定自体がエキセントリックだからか、突っ込み所はしょうがないと思う。というか逆に楽しい。
エンジントラブルで船外に出たときに、白血球に襲われて全身ウロコだらけみたいになって生還する所とか、すげー笑っちゃう。
体外では潜水艦の位置を把握するためにミニチュアのレーダーみたいなのが、頭のまわりを何個も囲っている姿とか超シュール。
なによりも一番は良いのは、一連の茶番を皆が大真面目にやっているという所。その姿勢がすごくよくて、面白いです。

脳内に入った時に、神経細胞、ニューロンみたいなのが電気信号でピカピカ光っている。
その時に「宇宙の闇を照らすすべての恒星も、思考の閃きに比べれば光が弱い。人類の思想こそ勝利の輝きなのだ」とか言う。
イームズや、手塚治虫のように、人間ひとりひとりの中に宇宙が存在するのだ。という言葉につながる感じがある。
さっきウロコだらけで死にそうになってた人が、急に遠い目をしてセンチメンタルになったりする。面白い。

村上春樹は「僕は自分をひとつのツールとして用いて、自分の奥の方にある意識の世界にアクセスしています。映画『ミクロの決死圏』みたいに」と言ってた。
青豆さんは、自分が天吾の体内にいることに気づく。つまり、私が天吾の立ち上げた物語の中にいることになる、と思っていた。

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The End_1617 並木橋 / PENTAX67

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