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デストロイ・マイ・ベッド
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「A・タルコフスキー / ストーカー」

いつか忘れたけど、けっこう前にドロネム先生に教えてもらった映画。
基本的にお勧めされたものはすぐに(手に入れば)みるんですが、なんか手が伸びなかった。
ソビエト出身の監督「惑星ソラリス」の人。最近の僕は「ソビエト連邦」というキーワードに敏感なんです。
ストーカーという言葉は皆さんイメージするあれではなく、密猟者、密かに獲物を追うハンター、という意味だそうです。

ある地域で、ある何かが起こり、多数の人間が犠牲になった。しかし謎は謎のままだった。政府はその地域を「ゾーン」と呼び、立ち入りを固く禁じた。ゾーンには願いが叶うという「部屋」があると噂があった。そしてその厳重な警備をかいくぐり、ゾーンの中へ案内する人間がいた。「ストーカー」と呼ばれるその人間の元に「科学者」と「作家」と名乗る男性が現れ、三人は部屋を求め、ゾーンに入る計画を進める。

あらすじを呼んで最初に「ツングースカ大爆発」をイメージした。
1908年、シベリアの上空で爆発した隕石が起こした強烈な空振。しかし謎が多く残る事故。
「ある地域で、ある何かが起こり、多数の人間が犠牲になった」という意味深な感じがミステリアスで良い。
なんだか分からないけど、なんだかすごそうなものってドキドキする「海辺のカフカ」の山の上での集団ヒステリーみたいなあれとか。

僕は初タルコフスキーでした。前情報でかなり詩的な映画を撮る人。というのがあったので、あまり深く考えないようにしてみた。
いわゆる理由とか、オチとか伏線とかなくて、意識を掘り下げる不思議メンタルディギン系な映画なんだろうかなと思ってた。
でもみてみたらあらびっくり、すごく綺麗というか、ノスタルジックな風景描写と、個性的なフレーミングでずっとドキドキしてみてました。
ハラハラではなくドキドキね。やっぱり理由とかオチとか、、これ!っていう答えみたいなものはなかったけど、僕としてはかなり楽しめました。

冒頭はモノクロ映像で物語は進む。ちょっとセピアになったりしたかな?古い映画だからか、わざとかわかりません。
そして「ゾーン」の中に入ると綺麗なカラー映像になる。これがかなりノスタルジック。SFだけど近未来感はまったくなくて、
どちらかといえば荒廃した文明の名残や、草原。そして廃墟感。全体的に長回しが多いのと、カメラワークが面白い。
それと効果音。列車の線路の音がリズミカルだったり(ダンサーインザダークっぽい)足音が妙な反響をしたり。怪しい。

「1984年」の時に書いた苦手な分野のディストピア「コブラ」みたいな。ああゆう感じではありません。
本当になんだろ、なんか懐かしい。ただの草原なのに懐かしい。なんか湿っぽい感じもすごく良い。
そうだ僕は雨が好きだったんだ。移動手段の8割が自転車になってしまってから雨が嫌いになってたけど
見る雨も、雨の中を歩くのも好きだったんだ。ということを思い出した。もうすぐ梅雨。今年は雨を楽しもうかな。

そんなに深く考えた訳ではないので、あんまり偉そうなことは分かりませんが、、
いわゆるゾーンにいけば人間の願望(欲望)が叶えられる。でも願望ってなに?あなた何を求めているの?という問いかけ。
そんなセリフはまったくないし、ゾーンの中にある「部屋」はすごく象徴的なもの。部屋に向かって自分自身と会話してる光景は
神に懺悔する殉教者に見えた。欲望とはなにか?から、救いとはなにか?に変わる瞬間がみえた。言葉はもちろんないけど。

詩的な表現、曖昧で意味深なセリフは、僕は大丈夫だったけど苦手な人はいるだろうな。
リアリストには辛い映画かもしれないです。「は!?、、で?」という感想しか出てこないような気がする。
あとタルコフスキー映画に通じて出てくるらしい「水」と「犬」も。すげえ意味深だった。
そしてラストの少女の演出。こりゃ物議を醸すでしょう笑。あまり万人にお勧めできる映画ではないけど、是非。

劇中に出てきた詩的なセリフ。好きだったので引用ー

ここは人間の心を映す
振動させ続けなさい
あなたの心に生じたその響きを
情熱と称するものは魂の力ではなくて
魂と外界の摩擦だ
気をいっぱいにして脆弱であれ
幼子のように弱くあれ
弱いことは偉大であり
強いことは無価値だ
人は生まれたときは弱くやわらかい
死ぬ時は堅く干からびている
木は生長するときやわらかくしなやかだ
乾き固くなると木は枯れる
堅さと強さは死の仲間だ
やわらかさと弱さはみずみずしさの表れだ
堅くなったものは勝つことができない

、、もうひとつ。

音楽はどうでしょう
現実と最も関係が薄いし、主義主張もなく
全く機械的な意味のない音で連想も呼び起こしません。
それなのに音楽は、人の魂に直接ひびくのです
体内の何が共鳴するのでしょう?
何が単なる音のつながりを喜びに変えて
何のために私たちを感動させるのでしょうか?誰のためでしょう?
何のためでも誰のためでもなく"無欲"なのですか?
そんなはずはない。全ては必ず、価値を持っているはずです。
価値と理由を。

タルコフスキー映画、いろいろ掘りたい。

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The End_1613 半蔵門 / PENTAX67

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