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かっこう
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「村上春樹 / ダンス・ダンス・ダンス」

「僕と鼠四部作」という呼び方が合ってるのかは知らないけど、僕はとりあえずそう呼んでいる。
この前に「羊をめぐる冒険」を読んで、その続きなので読んだ。村上春樹再読イヤーのあれです。
「羊をめぐる冒険」から間が空いての続編なのでこれを続きとしない人もいるみたいです。
鼠も直接的には出てこないけど、やっぱりこれはきっちり続編です。でもちょっと雰囲気は違うよね。

「僕」はあれから3年半の間、フリーのライターとして生活をしていた。それは自分の中で「文化的雪かき」と位置づけられるものだった。ある日、僕は僕の中に響き何かを感じとる。それは僕を呼んでいる(泣いている)彼女のサインだった。僕は函館での仕事を利用し、あの「いるかホテル」を訪れることにする。しかしそこはかつてのいるかホテルとは結びつかないホテルに変貌していた。そのホテルで僕は懐かしい人物と出会うことになる。僕はそれから東京、箱根、ホノルルなどいろんな所をまるでダンス・ステップを踏むようにすり抜けて行く。

僕の中でのいわゆる「村上春樹的な小説」は、この作品のような気がしている。
断片的なイメージの話だけど、ホテルの暗い部屋とか、紀ノ国屋の調教済みのレタスとか、東京の雰囲気とか。
文化的雪かきとか、急にいなくなる人とか、善対悪とか、スバルとか、セックスシーンとか。いろんな所に「村上春樹臭」がする。
そして僕はその村上春樹臭が好きだ。実際の「僕」はキザな野郎なんだろうけど、好きなんだ。憧れではない。

かつて、いるかホテルだった場所がドルフィンホテルというトレンディーなホテルに変わっていた。
前半はそのホテルで象徴的なイベントや個性的な人との出会いがあるけれど、そんなに物事は動かない。
ところがどっこい上巻後半から下巻にかけて「僕」は物語の中でいろんな所を飛び回る。
東京、札幌、辻堂、箱根、そしてホノルルまで「羊をめぐる冒険」で、全てを失った僕はこの先なにを喪失するのかドキドキして読んだ。

「羊をめぐる冒険」で出てきた美しい耳をした女の子は、今作でキキという名前で出てきます。
その他にも札幌のドルフィン・ホテルに勤めるユミヨシさん。そして13歳の美しい少女ユキ。
ユキの母親アメや娼婦のジェーン。といろんな女性が出てきます。いやいや女性だけでなく男性も。
ユキの父親、牧村拓。アメの付き人ディック・ノース。そしてそして五反田くん。登場人物が多いのもダンス感がある。

いきなりですが、僕はユミヨシさんが大好きです。
眼鏡をかけて、小柄で、ホテルのドアを少しだけ開き、スルッと滑るように入ってくる、現実的な女の子。
そりゃ、家に男性を上げるのに躊躇してバレバレな嘘を付いたり、ちょっと神経症な所があったりもしますが
僕はユミヨシさんが大好きになってしまったし、僕だったら暗闇の中でユミヨシさんの手を離したりはしないのである。

ネタバレにならない程度に読み終わった後の感想をかくと。。僕は村上春樹作品で一番のハッピーエンド感があると思っている。
いや、そりゃやっぱりいろいろ喪失するし「僕」はかなりタフに物事をこなすハメになるけど、結果的にはハッピーエンドだと思っています。
便宜的に「羊をめぐる冒険」から始まっている冒険は終止符を打った。それもかなり現実的な感じで終わった。お疲れさまとしか言えない。
あとは「僕」以外の色々な登場人物も、ハッピーとは言えない人もいるけど、まあちゃんと落ち着くところに落ち着いている。

ユキちゃんはいろいろあるけど現実にちゃんと戻って行くし、五反田くんは、、ね。でも彼の苦悩はおそらく誰の心にも潜む物だと思う。
片手でサンドウイッチを(美しい断面で)カットするディック・ノース。アメと牧村拓。それと官能的雪かき、メイ。あ、ハッピーな人居ないや。。
物語の最後に、これからこの人達がどうゆう人生を送るのかを想像できる作品は、僕の中で良い作品になります。
その先は想像するしかない、見れない光景ということが、切なさをまとって心を打つ。この物語を読んだ後にはその気持ちが大いに残りました。

追伸ー
この物語を読み終えた次の日に、駒沢のスノウショベリングさんに行き、店主の中村さんとお話できました。
僕はハルキストでも村上主義者でもなく、村上フリークです。頭が良くないので難しいことはわからないけど、村上春樹大好きです!という感じ。
難しい話をしても意地の張り合いみたいになってしまい、純粋に作品の話ができなかったりするのが嫌なのもあります。
でも中村さんはそんな僕を知ってか知らずか「昨日ダンス・ダンス・ダンスを読み終えてホヤホヤなんです」という僕のゆるい言葉に
ニコニコと純粋にその作品の話をしてくれた。それは読みたての僕でも忘れているような細かい事だったりして、すごいと思ったのを覚えています。
僕の廻りに村上フリークはあまりいなくて、作品について語ったりする仲間はあまりいない(トーゴ君くらい)だからかすごく楽しかったんです。
中村さんの話の面白いところは、すごく詳しくて細かいことなんだけど、重くなく笑いに変わるところ。
「ユキちゃんはよく「馬鹿みたい」と罵るんですが、それはエヴァンゲリオンのアスカと同じなんです」とか、笑。確かに。
あと、いま僕は「1Q84」を読んでいるんですが、長いし軽くない作品なので、ある意味で背中を押してくれるきっかけを求めていた。
中村さんは「1Q84はとても建築的なんです。図面です」と言った。その一言で僕は興味が一気に湧いて、自然に背中をすっと押された。
本屋さんだからという事もあるんだろうけど、興味を持たせるのが自然で良かった。そして今、月は無事2っになっています。それはまた。
と、とても楽しい時間だったんですが、一つだけ意見の相違がありました。中村さんはユキちゃん派で、僕はユミヨシさん派です。そこは譲れません。
中村さんありがとうございました。またお店伺います!

ながたけんじ拝

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The End_1537 千葉 / PLAUBEL makina 670

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