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静かな日々と、読むべき小説
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「村上春樹 / スプートニクの恋人」

いままで読んでて、村上春樹の長編作品の中で苦手意識があった。
ビートニクをスプートニクと間違えた女ミュウと、彼女に対し竜巻のように恋に落ちた女すみれ。
女性同士の恋愛だからかな?でもこれ同姓愛の話ではないし、一応「ぼく」として第三者(ではないんだけど)も出てくる。
前に読んだ時は、なんだか序盤から物語に入り込めず、苦しみながらも読み切った覚えがある。でも今回は違った。

ちなみに、僕が今年みた初夢は「スプートニク2号に乗せられたライカ犬が宇宙空間で僕を眺めている夢」でした。
だから今年最初に読むのはこれが良いかな、、と思って。村上春樹再読イヤーの続きとしても良いし。
ライカ犬は物語にはほとんど関係ないけど、ライカ犬のことをいろいろ調べてみた。とても不幸な犬だ。
これから自分に不幸なことが起こっても「ライカ犬よりはマシ」と思えば乗り越えられる気がする。

あらすじに変えて、冒頭の1ページ目の文章がすごくすきなので、引用します。
そしてこの文章が語るように、ほとんどすべてのものごとがここに集約されている。

22歳の春にすみれは生まれて初めて恋に落ちた。それは広大な平原をまっすぐ突き進む竜巻のような激しい恋だった。それは行く手のかたちのあるものを残らずなぎ倒し、片っ端から空に巻き上げ、理不尽に引きちぎり、完膚なきまでに叩きつぶした。そして勢いをひとつまみもゆるめることもなく大洋を吹きわたり、アンコールワットを無慈悲に崩し、インドの森を気の毒な一群の虎ごと熱で焼きつくし、ペルシャの砂漠の砂嵐となってどこかのエキゾチックな城塞都市をまるごとひとつ砂に埋もれさせてしまった。みごとに記念碑的な恋だった。恋に落ちた相手はすみれより17歳年上で、結婚していた。さらにつけ加えるなら、女性だった。それがすべてのものごとが始まった場所であり、(ほとんど)すべてのものごとが終わった場所だった。

前に読んだ時、すんなり入り込めなかったのは、文章が一人称になったり三人称になったりするということが、理由の一つかもしれない。
それは「海辺のカフカ」もそうだけどあっちは辛くなかった。むしろハマった。章ごとに主観が変わる「甘いのしょっぱいの交互作戦」にハマった。
だけど「スプートニク」は、なんとなく一人称と三人称をぼんやり行き来する。一人称と三人称の文章は読む方も読み方も変わるので
曖昧に区切られてるとなんか嫌だった。章ごとにちゃんと分かれてるんだけどね、なんだろうなんか曖昧。でも今回読んでてそれは嫌じゃなかった。

となると物語にも自然に入り込んで行くわけで、結果的にこの作品の自分的ランキングはうなぎ登りである。
村上作品の特徴の「向こう側とこっち側」は大きな意味で一緒だけど、それが井戸や森ではなく今回は音楽だったりする。音楽はしらせで山か。
その舞台はギリシャのなんとかって言う島である。たぶんこうゆうのは何でも良いんだろうけど、そうゆうしかけの作り方が神がかり的にうまい。
昔なにかで村上春樹のことを「まったくあり得ない話を、なんとなくあり得る感じに語るのがずば抜けてうまい作家」と言う人がいた。同感。

最近は村上作品を読んだ後、解説サイトを読むようになってて、昔はそれがいわゆる「ハルキスト」みたいで嫌だった。知ったかぶりになるし。
最近はそれが楽しくなってきている。だからといって僕は評論家でも、研究家でもありません。そもそもそんなこと出来ないけど、一ファンです。
そうゆうサイトを読むと、合ってるかどうかは分かりませんが、全く気付かなかったことや、全然違う角度から物語を分析してることに脱帽する。
それがすごく説得力があってスキがまったくない「ぼく」が一番のキーマンだということ。村上作品には「根源的な悪」が存在すること忘れてた。

、、でもやっぱり一番は、物語にどれだけ入り込んだかなので、そうゆう分析サイトは食後のデザート的な感じにしておきたい。
あんまりね、難しくなっちゃうと純粋に物語を楽しめなくなってしまうので。
簡単な感想をいうと苦手だと思ってた今作も、僕の中ではかなり喪失の物語であり、読後感はもうしばらくポカーンとしてしまった。
この歳になってもまだ喪失できることに喜びを抱きつつ、次はなにで喪失しようか考えている。

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The End_1499 城ヶ島 / PENTAX67

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