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山へいきたくなってきた
「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」より抜粋

人の心と人の心は調和だけで結びついているのではない。それはむしろ傷と傷によって深く結びついているのだ。痛みと痛みによって、脆さと脆さによって繋がっているのだ。悲痛な叫びを含まない静けさではなく、血を地面に流さない赦しはなく、痛切な喪失を通り抜けない受容はない。それが真の調和の根底にあるものだ。

そのときもし違う判断をし、違う行動を選択していたとしても、いくらかの誤差はあるにせよ、僕らは結局今と同じようなところに落ち着いていたんじゃないのかな。そんな気がする。

あの素敵な時代が過ぎ去って、もう二度と戻ってこないということが。いろんな美しい可能性が、時の流れに吸い込まれて消えてしまったことが。でも僕らはあのころ何かを強く信じていたし、何かを強く信じることのできる自分を持っていた。そんな思いがそのままどこかに虚しく消えてしまうことはない。

おそらく二度とこの場所に来ることはないだろう。エリに会うことももうないかもしれない。二人はそれぞれの定められた場所で、それぞれの道を前に歩みつづけることだろう。アオが言ったように、もう後戻りはできないのだ。そう考えると悲しみが、どこかから水のように音もなく押し寄せてきた。それはかたちを持たない、透き通った悲しみだった。彼自身の悲しみでありながら、手の届かない遠い場所にある悲しみだった。胸がえぐられるような痛み、息苦しくなった。

te1492.jpg

The End_1492 劔崎 / PENTAX67

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