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ピッチャーズ・マウンドのすり減ったプレート
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「村上春樹 / 色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」

「羊をめぐる冒険」を読んでいる頃に、次は「多崎つくる~」を読み返したいな。と思っていた。
その前に読んでいたポール・オースターの「幽霊たち」の登場人物が、全員色の名前で呼ばれていて
なんか「多崎つくる~」みたいだなと思っていた。そんな時に文庫化のニュースを耳にしたので、
これは読むか、となった訳だ。いいタイミングで物事は進んでいるのです。

多崎つくるは東京の大学を出て、鉄道会社で駅舎を設計する仕事に就いた。彼は高校時代まで愛知で育ち、完全なる調和が取れた親友4人に囲まれていた。彼以外の友人の名前には色が入っていた。アカ・アオ・シロ・クロと。つくるだけは名前に色彩を持っていなかったが、そのグループの完全なる調和はいつまでも続くと思っていた。だが彼が大学2年の頃、帰省した折に仲間の誰一人とも連絡が取れず、訳も分からないまま絶交の状態になってしまった。それから15年。ガールフレンドに「表面上は癒えたようにみえる傷だけど、中ではまだ癒えていないの。あなた自身の手でそろそろ明らかにしてもいいじゃないかという気がするのよ」と言われる。

この物語はミステリー小説らしい。最初に読んだ後に、解説サイトとかを覗いてそのことを知った。
再読なのでそれを念頭に入れて読んでたら、かなりのミステリー小説だった。影響されやすい僕です。
もちろん村上作品なので、分かりやすく事件、犯人、伏線などが張られている訳でなく、犯人も結局ハッキリしない。
そもそも犯人が存在するのかすら曖昧だ。だけどこれはミステリー小説です。そして僕は二回目にして犯人が分かってしまった。

解説サイトってあんまり見ないけど、村上春樹とデヴィッド・リンチ作品をみた後は頼らざるえない。
そしてそうゆうの読むと、すごく、本当にすごく研究してて、説得力があり、すごく細かい所まで読み解いてて感心する。
僕はそこまで読解してないのに村上ファンを語っているので、ニセモノ感はあるかもしれない。でもまあ好きだからいいんです。
しかし本当に感心するし「あ、そうだったの!」というビックリ仰天事実(そしてそれはちゃんと理論立てしている)も分かって楽しい。

の主人公、つくるが僕と同じ年齢だったことで共感する部分があったり、僕にも(完全なる調和とまでいえなくとも)そうゆうものがあったのかな
と、読み進めるにつれ物思いにふけることは多かった「羊をめぐる冒険」の時も書いたけど、村上作品(特に初期)は喪失の物語だと思っている。
後期になってそれは変わったけど、また最近戻って来てる気がする。事実、僕はこの物語を読み終わった後に、ごっそり喪失した。損なった。
やれノーベル賞だ、やれハルキストだ、やれ解説サイトだ(読んでるけど)関係なく、僕はその感覚が好きだから村上春樹を読んでいる部分がある。

以下、自分のことを言われている気がしたくらい響いたので引用ー
僕にはたぶん自分というものがないからだよ。これという個性もなければ、鮮やかな色彩もない。こちらから差し出せるものを何ひとつ持ち合わせていない。そのことがずっと昔から僕の抱えていた問題だった。僕はいつも自分を空っぽの容器みたいに感じてきた。入れ物としてはある程度形をなしているかもしれないけど、その中には内容と呼べるほどのものはろくすっぽない。自分が彼女に相応しい人間だとはどうしても思えないんだ。時間が経てば経つほど、僕のことをよく知るようになればなるほど、彼女はたぶんがっかりしていくんじゃないか。そして僕から遠去かっていくんじゃないか。

そしてもうひとつ。
駅をこしらえるのと同じことよ。もしそれが仮にも大事な意味や目的を持つものごとであるなら、ちょっとした過ちで全然駄目になったり、そっくり宙に消えたりすることはない。たとえ完全なものではなくても、駅はまず作られなくてはならない。そうでしょ?駅がなければ、電車はそこに停まれないんだから。そして大事な人を迎えることもできないんだから。もしそこに何か不具合が見つかれば、必要に応じてあとで手直ししてけばいいのよ。まず駅をこしらえなさい。彼女のための特別な駅を。用事がなくても電車が思わず停まりたくなるような駅を。そうゆう駅を想い浮かべ、そこに具体的な色と形を与えるのよ。そして君の名前を釘で土台に刻み、命を吹き込むの。君にはそれだけの力が具わっいる。だって夜の冷たい海を一人で泳ぎ切れたんだから。

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The End_1487 西郷山公園 / PLAUBEL makina 670

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