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汽車の窓辺から
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「ポール・オースター / ガラスの街」

柴田元幸訳で読み直した。篠田太郎さんのご助言で。
ポール・オースターはどメジャーな作家だけどこの作品と「幽霊たち」「鍵のかかった部屋」のニューヨーク三部作しか知らない。
あと「ナショナル・ストーリー・プロジェクト」か、、あれは小説じゃないのでカウントしません。
なのであんまり知らないといっても良いと思います。それでもやっぱり耳に入ってくるくらいどメジャーな作家。

ダニエル・クインは詩や評論を書いていたが、妻子を亡くしてから野心を失い、匿名でミステリー小説を書いて暮らしていた。仕事をしない時間はニューヨークの街をあてもなく散歩するのが趣味だった。ある真夜中、彼は電話で起こされる。その電話の内容は、ポール・オースターという私立探偵への仕事の依頼だった。クインはかけ間違いを指摘して切るがその電話は後も続いた。興味をそそられたクインはポール・オースターとして依頼者に会うことにする。

まず最初に、読み直そうと思って本棚を物色して見つけた。それが山本楡美子訳。
それをSNSであげたら篠田太郎さんが柴田元幸訳をお勧めしてくれた。僕は柴田元幸訳版の存在を知らなかったので早速買ってみた。
そしてせっかくならと思って最初の方だけ読み比べてみた。じゃないと違いがわからんので。
結果は、、こんなに訳者によって表現が変わるんだ。という印象につきる。これは今まであまり訳者に興味を持ってなかったので、少しびっくり。

そしてもうひとつ、なぜこの小説を再読しようかと思ったか。それには漫画版「シティ・オブ・グラス」の存在がある。
これも前に読んでたんだけど、最近何となくまた読んだ。絵はデビッド・マッズケリというアメコミの人が描いているんだけど、それが好きなんです。
ポスカで描いたようなモノクロの絵。そして抽象的かつ的を得た絵で、とにかくすごく好きなんです。
その漫画版を読んで、原作も再読しようと思った。その為この小説の文章で描かれている風景は、全て僕の脳内で漫画の絵とリンクしています。

「そもそものはじまりは間違い電話だった」という言葉からしびれるのは僕だけだろうか。
最初は間違い電話として受け流すクインだが、自分を偽り、覆い、自分じゃない誰かになろうとする。
そしてピーター・スティルマン、スティルマン夫人との出会い。言語が混乱しバベルの塔が崩壊した話。
ミルトンの失楽園、アダムの堕落の話、ドンキホーテの話。ハンプティダンプティと、ぜんぶ面白かった。雑ネタが増えた。

ニューヨークだけに限らず、都会の喧噪に紛れ自分を確立できない感覚は理解できる。
自分という存在が曖昧になる感覚。水の中を歩いているような白日夢の感覚は東京でもある。
この物語のクインはニューヨークの街に溶け込み、自分が自分でなくなっていく様が描かれている。
それは孤独な人間の心に宿るものかもしれない。きっとそうゆうのはクインじゃなくとも、僕にも誰にでもあるはずだ。

この物語は決して探偵小説ではない。もっと精神的で切ない喪失の物語だ。そしてクインは僕と同じ35歳。

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The End_1441 並木橋 / PLAUBEL makina 670

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