DATE:2015/06/21(Sun) 09:35 No.1675

「伊坂幸太郎 / 夜の国のクーパー」
初期の作品は好きだったんだけど「砂漠」で引導を渡して以来、手を出してなかった伊坂幸太郎作品。
相変わらずの筆量で、バンバン出版されてるみたいだけど全く読んでなかった。
最近、村上春樹熱が再燃してて普通の小説(普通の小説?)に手が伸びないと書いたけど、やはりずっとカレーは飽きる。
僕のテンションは今、映画よりも活字にシフトしてるので、書店で物色すると彼の作品が大いに売り出している。という訳で久々に。
戦争に負け支配されることになった「夜の国」に占領軍の先発隊がやってきた。8年間に及ぶ長い戦争が終わり、国王が国民の目の前で敵国の兵長に処刑される。絶望する国民だったが、戦争に負けることがどういうことなのかが分からない。そんな時広場に空身の馬がやってきた。無人の馬から何者かが降り立つ音を聞いた国民は、困ったときに現れる伝説の「透明のクーパーの兵士」がやってきたと歓喜する。と、いう光景を眺めていた猫と、たまたま漂着した、妻に浮気され自暴自棄になった「私」こと仙台市役所職員を交えた不思議な物語。
450Pくらいの長編ですが、最初の150Pくらいまで世界の設定説明が延々と続くのでかなり辛かった。投げ出したいとも思った。
でも読み出した小説はどんなに辛くても最後まで読むポリシーと、それなりに引き込まれる感覚もあって、耐えた。
そしてこのままやめたらまた、伊坂幸太郎作品にまた悪いイメージが植え付けられる。。と思って、耐えた。
結果的に中盤からエンジンがかかり、グイグイ来た。そして最後までノンストップまではいかないけど、それなりに読めた。
予想はしていたというか、大体の彼の作品がそうであるように、前半は大いに風呂敷を広げる。
大きな伏線とは別に、後できっとつじつまが合うんだろうと思わせる細かい要素もいっぱいばらまかれる。
その辺いちいち気にしてたら進まないので、素直にだまされようというスタンスで読み進めるのが良いと思います。
猫の視点、国王の視点、敵国の視点、国民の視点、鼠の視点、役所職員の視点。いろんな視点で物事が観察されるので混乱しやすいし。
ネタバレしちゃうと元も子もない物語なので(伊坂作品が往々にしてそうであるように)多くは語りません。
シンプルに一言だけ、、基本的に全部ウソです。これも伊坂作品読む時にはそうゆうつもりで読んでるけど。どうせウソでしょ、って。
それがただのウソということで終わらず、裏の真実があるということ。そして設定、伏線、広げた物全てが最後で全部収束するという快感。
そうゆうのが伊坂作品の人気たる所なんでしょう。この物語も良く計算され、素晴らしく気持ち良く納まっていた。。
読み応えもあるし、前半辛いけど引き込まれるし、緻密に作り込まれてるし、こら売れるわという作品です。それは間違いない。
なんだろ、これは僕が歳をとったせいなのかな、と思ってしまった。いまいち心が動かなかった。だからなに?と冷めた自分は居た。
エンターテインメント小説に興味が薄れているのはあるんだと思います「あー楽しかった」だけでは満足しなくなっているような。
なにも心に残るものが無い、とまではいわないけど一年後内容を覚えているかと問われたら、とても自信がない。
こんなこと書いておいてまったく説得力がないと思いますが、本当に読み物としてはとてもオススメできます。
そして僕は今、続けて伊坂幸太郎の小説を読んでいる。

The End_1303 洗足 / Nikon F3
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