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「村上春樹 / 世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド(下)」

僕は村上春樹の大ファンだけど、研究家ではないし、いわゆるハルキストでもないので、難しい考察なんて書きませんし、書けません。
読み終わったあとそうゆうサイトをみると、すごく説得力あって素直に感心するし、本当に良く研究されていてすごいなと心底思う。
否定するつもりもないし、色んな楽しみ方があると思う。だけど僕が村上春樹の小説が好きな上で、そうゆう部分は結構どうでも良かったりする。
なんか分かんないけど、心が動いた、という事実だけで良いのです。単純に脳みそが追いついてないだけですが。

計算士を職業とする「私」の物語。ある老科学者から仕事の依頼を受ける所から物語は始まる。計算士と敵対する記号士、そして地下世界を徘徊する「やみくろ」の存在。独特の言葉を使う全身ピンクの太った女の子など謎に満ち、魅力的な登場人物の中で「私」にとってハードボイルドな展開が次々に起こる。一角獣の頭骨や、ペーパークリップなど、暗示的な物であふれる少し変わった世界で、「私」は自分自身に隠された大きな秘密に向き合う。そして同時進行していくもう一つの物語との関係性とは。※あらすじは上巻と同じです。

下巻の感想なので、必然的にネタバレになってしまう部分があります。未読の方は読まないでください。
しかしながら、僕が村上春樹の小説をおすすめする時、この作品をあげることは多いです。
実際、一番好きだと豪語してた時期もあります。今も一番かと問われたら少し悩んでしまうけれど、それでもかなり上位に食いこみます。
氏の小説の中でも群を抜いてエンターテインメント作品だと思ってます。読み返してまた思う部分は多々あるけど、おすすめです。

「ハードボイルド・ワンダーランド」の下巻の最初の方で、博士から今回起こってる物事の説明がされる。
それを納得するかどうかは置いといて、それでもうほぼこの物語は終わりっちゃあ終わりになります。
その後地下を出てからの「私」は大した行動はしないし、劇的な展開もない。それでいいのだ。それが村上春樹だ。
それでもちゃんと読後感もあり、喪失感もある小説です。それはこの物語だけに言える事ではない。そしてそうゆう所が大好きだ。

氏の他の小説で出てくる「森」や「井戸」というキーワードが、人間の無意識下に降りていくものだとしたら
今回の地下の冒険が(少し劇的すぎるけれど)それにあたるのかもしれない。
そのシーンを読んでいると、イデア論に繋がるような気がしたのは、前に読んだ時にも思ったのか、今回だけかは、わからん。
なんにせよ、ピンクの太った女の子と縦横無尽に地下の暗闇の中を歩き回る様は、他の小説にはみられないスピード感です。

前回の上巻の感想を書いたときに「世界の終わり」の章についてあまり書かなかったので、ちょっと書いてみます。

「ハードボイルド・ワンダーランド」が無意識に乗っ取られる前の話で「世界の終わり」は無意識に乗っ取られた後の世界。
そこは周囲を絶対的な高い壁に囲まれた街で「僕」は影を切り離され、街に来る以前の記憶を全て失っていた。
その街に住む人々は皆、心を持たずに生活をしている。そのせいか平和で静寂な時が流れている。
「ハードボイルド・ワンダーランド」で博士が「そこにはあんたが失ったもののすべてがあるのです」と言ってた。その意味。

下巻では上巻では語られなかった街の成り立ちや、性質が細かく説明されている。夢読み、獣の存在、図書館の女の子の心、森、そして影。
影は失ってしまった自分の記憶。アイデンティティ。それが消えるという事は記憶を礎にした感情、意思、欲求も無くなるということ。
僕は心を失い平穏に生きるか、心を守り影と一緒に別の世界へ行くかの選択を迫られる。その心の動きの表現はもう秀逸で、好きな場面です。
壁で囲まれた閉鎖的なシチュエーションだからか、現実世界がハードすぎるのか分からないけど、こちらの物語は静かに進んでいく。その様が好きだ。

1985年に発表された小説で、その後短編にタイトルになるキーワードがよく出てきた。人間の無意識下にあるものを「象工場」と言ったり
「メリー・ゴー・ラウンドの馬に乗ってデッド・ヒートをやっているようなものだ」とか。村上春樹ファンだとニヤっとしてしまう所は多い。
そして上巻と同じくらい意味深なキーワードは増えて行く。「ボブ・ディラン」とか「ダニー・ボーイ」とか「手風琴」とか。
世界は暗喩で満ちているのだ。村上春樹の小説を読んだ後は、だいたいが世界をそうゆう目でみてしまう自分がいます。

また何年後かに読もう。

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The End_1255 羽根木 / Nikon F3

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