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ただ影をみているだけ
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「村上春樹 / 世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド(上)」

昔、この文庫本を長友くんに貸してて、そのすぐ後にハードカバーが装丁を新しくして再発された。
僕は村上春樹の小説は順位なく好きだけれど、もしランクを付けるのならばこの小説はかなり上位に食いこむ。なのでその新装ハードカバーも買った。
文庫本は、長友くんにそのままあげちゃった。時をは経ち、山に行く時の電車内の過ごし方が問題になり、またこの小説を再読しようと思った。
しかし山に行くのにハードカバーってのはどうなんだ。でもまた文庫本買うのもあれなので、長友くんに返してもらった。自分勝手な僕です。

計算士を職業とする「私」の物語。ある老科学者から仕事の依頼を受ける所から物語は始まる。計算士と敵対する記号士、そして地下世界を徘徊する「やみくろ」の存在。独特の言葉を使う全身ピンクの太った女の子など謎に満ち、魅力的な登場人物の中で「私」にとってハードボイルドな展開が次々に起こる。一角獣の頭骨や、ペーパークリップなど、暗示的な物であふれる少し変わった世界で、「私」は自分自身に隠された大きな秘密に向き合う。そして同時進行していくもう一つの物語との関係性とは。

「ハードボイルド・ワンダーランド」という節と、「世界の終わり」という節が交互に語られ、物語は進んでいく。
村上春樹の長編小説では「1Q84」で見られる手法ですが、かなりの中毒性を持つこの手法が僕は大好きです。
ずーっと同じ物語が続くのはもちろん普通に良いんだけど、やっぱり文章に、物語に疲れることもある。
片方が終わると片方の物語が始まる。ってなると、次が気になりずっと読み続けることになる。甘い物の次はしょっぱい物だ。

村上春樹の小説の特徴というか好きな所。とにかく個性的な登場人物達。特に「ハードボイルド・ワンダーランド」節でそれは如実に出てる。
主人公である「私」はその他の小説でも見られる、クールで、ドライな男性。そうなりたいかと問われたらノーだけど、憧れる、かな?やれやれ。
その「私」の静かな日常をかきまわすキャラクター。老博士、孫娘のピンクの女の子。は冒頭から出てくるかなり主要な人物。
図書館の女の子は、現実にお付き合いしたい程魅力的な女の子。記号士の凸凹コンビは、ある意味とても爽快な行動を起こす。

それぞれのキャラの存在に役割が見え隠れする雰囲気が好きで、いちいち勘ぐって読んでしまう。
上巻では謎にあふれ、意味深すぎる会話や、暗示的な要素が多いのでそう思うのかも。率直に言うとよく分からないけどザワザワする感じ。
キャラクターだけではなく彼の小説によく出てくる、井戸、森、洞窟等のファクターも含めての印象。これは彼の小説読んでるといつも感じる。
特にこの話は人間の深層心理の話なので、特にリアルに感じるのかもしれない。自分の意識に征服される自分。不思議の国のアリス、ってか。

この小説はすでに4回くらい読んでいる。結末も構成も全て覚えている。となるとその意味深さもつまらなく感じるかと思うけど、そうではない。
何度読んでも新鮮、とまでは言えないけど新しい発見があったり、この不思議なファンタジーの世界に入り込んでいく感じが、とても気持ち良い。
今回読んでて「やみくろ」の巣の洞窟って、プラトンのイデア論の様な気もしてきた。科学の純粋性という説明の時にプラトンも出てきてたし。
非現実のありえない変わった世界を、あたかも現実的に本当に起こったことかのように語る。彼のその表現力は、もうなんとも言えない。

「世界の終わり」の節の方をなにも書いていないけど、とても静かな「世界の終わり」という、壁で囲まれた街での話。
鳥以外は絶対に抜けられない壁に囲まれた街。そこで「僕」は自分の影を切り離され、眼に「しるし」を付けられる。
記憶を失った僕は図書館で、そこにいた女の子に手伝ってもらいながら、獣の頭骨から古い夢を読む。
もう一度言う。獣の頭骨から古い夢を読む、のだ。

つづく

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The End_1234 忍野村 / PLAUBEL makina 670

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