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アイリッシュセッターの逆襲
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「桐野夏生 / 柔らかな頬(上)」

メタボラのあと、岩井俊二のラヴレターを挟んで、すぐに読んだ桐野夏生作品。
これ読んでるときに、現実で同じようなことが起きたのでとても驚いていた。
松本市のあれ。あの子どうなったんだろう。と思ってたら、悲しい結果になってしまっていた。
とても残念です。それにしても本当に偶然だった。こんなことってあるんだな。

カスミは、高校卒業後に家族と故郷の北海道を捨てた。しかし皮肉にもその北海道である事件が起こる。カスミは夫の友人である石山に誘われ石山の別荘を訪れた。朝の散歩の途中、少しだけ目を離した隙に娘がいなくなった。事故か、誘拐事件か、まったく情報もない状態で警察による山狩りが始まるが、娘は見つからず失踪事件として捜査が始まる。カスミは一人罪悪感を抱き、自分を責めていた。それは、カスミと石山は密かに逢い引きを重ねていて、その別荘でも関係をもっていたことによる感情だった。その後カスミは、失踪から4年たち、事件の捜査が打ち切られても一人娘を探し続けた。元刑事の内海も加わり、事件の関係者を訪ね歩く。真実というゴールははたしてあるのか。直木賞受賞作。

文章力は本当にすごくて、こんなに長い物語をぶれることなく最後まで持っていけることがすごい。
そしてメタボラの時にも書いたけど、文章をグイグイ読ませる牽引力をすごく感じる、だけど
内容が内容なだけに怖くなる。グイグイ進んで気持ち良いだけに怖くなった。
まだ上巻だけど「この物語、どうやって終わるんだろう」と不安めいた期待を持ちながら読んでいた。

とにかく入り口から暗い。子どもの失踪という、世の中のお母さん全員が感情移入しやすい題材。
これは読んでてつらい所が多々あった。いつの間にか失踪した子どもが自分の娘のような気がしてくる。
子どもどころか結婚すらしてない僕がそう思うんだから、実際子ども、特に娘がいる人にはたまんないんじゃないかな。
だけど、子どもの失踪はオプションの話。ということが分かってくるとさらに恐怖が増します。

物語には、時間によって風化してしまうものと、まったく変わらない心情が多く表現されていた。
家庭を捨てても良いと思ってしていた情事。それが原因で大切な子どもを失った母親。
一人北海道に残り娘を探していたけれど、探していたのはもしかしたら娘じゃないような気がする。
そして出てくる人全員が怪しくて、容疑者にみえてくるけど、この物語が伝えるのはそうゆうことでもない。

中盤から出てくる元刑事の内海は、僕と同年代なんだけど末期のガン患者。
抗がん剤治療どころか、病院での治療も拒み、自然に自分の死を待っている男。
この男の存在がこの物語では大きなものとなっていた。
死ぬ時期が見えた男の生き方は、とても人ごとでは済まされないものだった。

天童荒太の時にも書いたけど、ここまで死についての描写ができる作家は多くない。
多分一度死んだことがあるハズだ。じゃないと普通の人には無理だよ。
すでの下巻も読み終わっています。それは今度書くけど、なかなか一筋縄ではいかない小説でした。
桐野夏生作品おもしろいなー。でも少し違うの読みたくなってきたなー。

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The End_982 西小山 / Nikon F3

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