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なんて遠いところまで来てしまったのだろうか
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「桐野夏生 / メタボラ」

この作家の小説は初めて読みます。売れっ子なので名前は知っていたけど。
書店で物色している時に、ぶ厚い文庫本があるなと思って手に取り、表紙の絵が気に入って購入。
なんでか、たまに長編小説を読みたい衝動にかられる。長い物語に身を投じたくなる時は多々ある。
読みづらくて長いのは苦しいけど、この小説グイグイ読ませる文章でした。もうグイグイ。

記憶を失った僕は、気が付くと真夜中の沖縄の山中をさまよっていた。向かう先どころか方向すら分からないジャングルを幸運にも抜けたあぜ道で、宮古島出身の昭光に出会う。僕は昭光に「ギンジ」という名前を貰い、昭光は「ジェイク」という新しい名前を名乗る。二人とも新たな人生を歩もうとするが、実社会のヒエラルキーから抜け出せず悪戦苦闘する。孤独、貧困、そして破滅へ道。過去を失ったギンジと、故郷を捨てて沖縄本当に逃げてきたジェイク。若者二人が現実において苦悩する様を描いた作品。

桐野夏生という人の作品で、これを一番最初に読んで良かったと思う。すごく良い印象だったので。
物語の内容はそんなに明るい内容ではないんだけど、すごく色んな問題や現実が詰め込まれてる物語でした。
最初の章は「僕」ことギンジの視線で語られ、二章はジェイク視線。その後とりあえず前半は交互に語られ進行します。
記憶がないギンジの苦悩の章は読んでてなかなか辛いものがあった。ジェイクの章は逆に明るすぎでそのギャップがまた。

二人が生活を始める沖縄本島。表沙汰は華やかで陽気で楽しそうだけど
裏というか、現地の人たちは割と複雑な現実を抱えていた。不況とか、移住者の問題とか米軍とか。
旅行者にはとてもいい所だけど、住むにはあまり向いてない島なのかもしれないと思わせる。
仕事がないんだな。それが一番大きいのかも。離島というリスクも。

ネタバレにはならないと思うけど、、ギンジの記憶は後半復活してきます。
段々と明らかになるギンジの過去。なぜジャングルをさまよっていたのか、とかも。
これがもう読んでられないほどの辛さでさ。でも突拍子もない話ではなく、現実的にありえる。だから余計つらい。
そして文章力、グイグイ。辛くて苦しさが伝わってくるのにページをめくる手は止まらない。気持ち良かった。

現実はとても現実で、なにかのきっかけで上に上がれる人もいる。
だけど、社会的ヒエラルキーの中、泥沼から抜け出せず、そこに希望を見いだすことすら忘れてしまうことがある。
ちょっとしたきっかけで悪い方向に向かうと、坂を落ちるように悪い方へ向かってしまう。
そうなるともう希望もなく、生きていてもしょうがない。と思うのはどこか自然なことに感じてしまった。

現代はいい方向にも悪い方向にも、そのスピードがとても速いような気がする。
僕はこの小説を読んでいて、明日は我が身だと思った。そしてトランプの大貧民を思い出しちゃった。
自分の立場は大貧民。いいカードが来ても富豪に搾取され、自分は泥沼から出られない。
しかも這い出るということは、元富豪が貧民として泥沼にはまること。考えるとすごい陰険なゲーム。

この人の小説は「圧倒的なリアリズム」かもしれない。そして何よりも長い物語を読んできて、あの終わり方。
複雑な終わり方で、心に鈍痛は残るけど、希望は残っている。小さいけれど。
ちょっとこの小説は忘れられない感じになりました。他のも読んでみたいと思っています。
「メタボラ」はメタボリズム=新陳代謝。からの造語らしいけど、どういう意味なんだろうか。

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The End_971 多摩川 / Nikon F3

「THE END PHOTO」「PHOTO ARCHIVE」「Trinograph. INTERIOR」「Facebook」
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