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変質者という名のもとに
僕は自分のことを「気持ちがいい人間」だとは思ってないし、どちらかと言えばわりと気持ち悪い部類に属するんだろうなと思っています。普通ってなんだ?って中学生みたいな話になると、今でもやっぱりよく分からない部分はあるけれど、どう見積もっても僕は普通の人とはいえない気がする。いわゆる「変な人」なんだと思う。でも犯罪を犯すような人間ではないし、ある程度の常識は持っていると思っている。線を引けている変な人という感じなのかな?そんなんだと思っています。たぶんね。なんか急にすみません。話は先週にさかのぼります。

その時は訳あって自宅で仕事をしていた。それも結構な急ぎの仕事で、夜遅くまでかかりそうな雰囲気だったので夕方のうちに買い物をすましておこうと思い外出した。ちょっとそこまで、なのでラフな格好で出かけた。Tシャツ一枚にコーデュロイのパンツ。ロールアップして裸足にビーサン。いつもの帽子をかぶり、コンタクトめんどうだから眼鏡のまま。っつー僕のことを知ってる人なら、まあいつもの僕の格好の延長だと思ってくれるでしょう。しいていうならばその日は少し風が強くて肌寒かったので「ちょっと薄着かも」ということくらい。それでも5月、一年で一番気持ちいい5月。半袖でもまあ大丈夫だし、僕以外にも同じような格好の人はいたはず。だからたいして服装は変ではなかった、はず。

家から歩いて5~6分の所に某スーパーあって、そこに向かう途中にお弁当屋さんがある。そのお店の前におじさんが立っていて、僕がそのおじさんの前を通り過ぎた時に「うぇ、気持ち悪い」という声が聞こえた。ファーストコンタクト。でも後で考えればなんか言ってたな、、と思うだけでその時はあまり気にならなかった。僕はスーパーでいつもどおり買い物をすまし、お気に入りのアイスも買って家に帰ろうとした。あたりまえだけどまたお弁当屋さんの前を通ることになる。その時、店の前に立ってこっちを見ているおじさんに気付いた。外見は普通のおじさんで、いわゆるホームレスだったり、酔っ払った感じの人ではなくどちらかといえば小綺麗な格好をしていたはず。シャツにコットンのジャケットを羽織ってるような感じ。その時はまだそんなに気になってなかったので「なんかこっち見てる人がいるなー」くらいにしか思ってなかったんだけど、僕がおじさんの前を通るときに「気持ち悪い、気持ち悪いな」とぶつぶつ言っていた。その時「もしかして僕にいってるのか??」と思ったのだ。少し気になったけど僕はそのまま通り過ぎて自宅方面に歩いていった。途中、薬局で少し買う物があったので寄り、お店から出た時に気になってお弁当屋さんの方を振り返ると、そのおじさんは3~40mくらい離れてる向こうからまだ僕のことを見ていた。恐い気持ちと、なんかむかついてきたのと、変な期待感が混ざって、またお弁当屋さんの方に歩いていってみた。「次にまた前を通ったら同じことを言うのかな?」と思って。そうしたら案の定、そのおじさんは僕が横を通る時に「わ、気持ち悪い」と言ってきたのだ。

僕は立ち止まりおじさんを注視した。そしたらまたぶつぶつと「気持ち悪い、気持ち悪い」と言っていた。完全に僕の目を見て。僕はおじさんに「さっきからなんなんですか?」と聞いてみた。おじさんは僕の足下から頭の先をなめるように見て「お前気持ち悪いな、大丈夫か?」と言ってくる。酔っ払ってる感じはやっぱりない。僕は「僕?僕のどこが気持ち悪いんですか?」と聞くと「どこってお前、聞くまでもないだろう、鏡みてみろよ気持ち悪い」と言っていた。最初にかいた通り僕は自分のことを「気持ちがいい人間」とは思っていない。どちらかといえば気持ち悪い人間に属すると思っている。だけど見ず知らずの人間に「気持ち悪い」といわれる種類の気持ち悪さではないはずだし、そもそも他人にそんなこと言われる筋合いはない。はずだ。でもそのおじさんは本当に屈託がなく、なんのためらいもなく、とてもまっすぐな瞳で「お前大丈夫か?」と僕に言ってくるので訳がわからなくなり、本当に自分が大丈夫なのか不安になってきた。「自分では気付いてないだけで、もしかして今の僕にすさまじく気持ち悪い部分があるのかもしれない」と思ってきた。そして稲妻が走るかのようにひとつの仮説が僕の中を駆け巡った。

「このおじさんがなんのこと言ってるかまったく分からないけど、もし今の僕がチャックが全開で、局部まるだしのまま歩いてたら、、そしたらこの状況にも合点がいく。それはさすがに気持ち悪いし弁解の余地はないし、おじさんがここまで言うのも納得する。やばい、きっとそうだ」と思った。そこまで思わさせる強烈なプレゼン力がそのおじさんにはあった。そのくらいおじさんの僕に対する言葉はまっすぐでシンプルで説得力があった。僕はおそるおそる自分の股間を確認した、結果は、幸か不幸かちゃんとしてて、チャックも完全にしまっていた。僕は心底ほっとした記憶がある、、だけど、そしたらこのおじさんが僕のどこに対して「気持ち悪い」といっているのかが、まったく分からなくなった。なので「だから僕のなにが気持ち悪いんですか」ともう一度聞いてみた。そしたらおじさんは動物の咆哮を思わせる、すごく大きな声で。

「近寄るな変質者!!」

と叫んだ。まわりにそんなに人はいなかったけど、それでも夕方の商店街のど真ん中。一瞬空気が止まった。僕はその言葉と声の大きさにびっくりして、急にものすごく恐くなり、踵を返してその場を離れた。すぐ先の交差点の角を曲がる時に後ろを振り返ると、そのおじさんは僕をにらみつけるようにまだ見ていた。完全に悪夢だ。僕は今起きた事に整理がつかなくて、そのままそこからすぐ近くにある嶋さんの店に向かった。嶋さんは髪を切ってくれる人で、幸いにもその時お店にお客さんはなく嶋さん一人だった。なので今起きた事を聞いてもらった。その時の僕はとにかく客観的な意見が欲しかった。嶋さんに「そんなことがあったんだけど、ぼくそんなに気持ち悪いですか?」と聞くと(今考えるとすごい質問)「いや、いつものけんちゃんだ」といってくれてた。いつものけんちゃん=気持ち悪い。ということかもしれないけど笑。とりあえずお店の鏡で自分をみてみても、薄着なくらいでいつもと大きく違う所はない。とりあえず人に話したこともあり少し落ち着いたので、嶋さんにお礼を言って自宅へと向かった。家に着く頃にはアイスは完全に溶けてベチャベチャになっていた。

それからいろいろ友達に電話して、今あったことを聞いてもらった。みんながみんな僕が変質者ではなく、そのおじさんが変質者だといってくれる。そして「そうゆう人にむやみに近づかないほうがいいよ」と口を揃えていう。話しかけるなんてもってのほかだし、ナイフとか出てきたらどうするんだ、とか。そう言われて思うけど、その可能性もあったんだなと想像すると恐くなる。でもとりあえず物事は「僕ではなくそのおじさんが変質者」ということで勝手に結論づいた。だけどいろいろ考えてしまう、そうゆう所が僕らしい所で、どんなこともなにか理由があって起こったんだと考えてしまうのだ。いわゆる星新一のSFみたいな話だけど、僕がみているものと人がみているものが違ったらとか。僕の普通と、人の普通は違うこととか。僕は服を着ていると思っててもスッポンポンかもしれなかったらとか。想像(妄想)は進むと、現実とはなにか?時間とはなにか?世界を構成しているものはなんなんだ?みたいな壮大な話にもなりかねなくなってきて、今考えてもそれから数日はどこかフワフワして、なんか変な感じだった。現実のような非現実のような曖昧な感じ。そしてトラウマ言えるほど偉そうなものではないけれど、被害妄想も大きくなった。例えば、エレベーターに一人で乗った時、締まる直前に入ってきた人が「あっ」といって降りていった。たぶん上行きと下行きを間違えただけだと思う、たぶんそうだと思うけど心のどこかで「僕が変質者だから降りてったんだな」とか思ったり、すれ違いざまに女の子とすごい目が合った時とかも「変質者だと思われてるのかな。」とか、いちいち面倒くさいけど思ってしまう。自意識過剰といえばそうなんだけど「なんかこんな僕ですみません」感が前より強くなってた気がする。基本的に「変」ということや「人と違う」ということは個性であり、いいことだと思っているけど、その何日間かはそう思えない自分がいた。

便宜的に今回のあのおじさんが「変質者」として話は終わってしまうけれど、もしかしたら僕があっち側かもしれないし、もしかしたらもうあっち側がこっち側かもしれない。となるとこっち側がすでに自分が思うあっち側で、もうなんだかわからなくなる。ボブ・ディランのいう「君の立場になれば君が正しい。僕の立場になれば僕が正しい」と同じようなそうでないような。今となっていろいろ考えてみると、人間はいろんな物事を肯定したり否定したり、取捨選択して自我を屹立させているんだと思う。その時の僕はいわゆる人間の基本となる地の部分が揺れていた。自分が普通だと思っていたことが、もしかしたら普通ではないのかもしれないという地の部分がグラグラしてた。そんな状態ってこんなに不安になるのか、と思うくらい不安になった。幸いにも僕はそんなに大げさなものにはならなかったけれど、自分で確立していった精神的支持が完全になくなった時、人間の精神はどうなっちゃうんだろう?と想像すると恐ろしい「タガが外れる」ということはそうゆう状態のことを言うのかもしれないな。そしてそれはすごく紙一重で、僕もそうなったかもしれないし、誰にでもそうなる可能性はあるということなのだ。今じゃすっかり元通りの自分に戻っているけど、なんかいろんな意味で大変でした。本当にその人が変質者だったのかどうかはいまではもうわからない。もしかしたら霊能力者で、僕の心を見透かし、腹の底で抱えてるドロドロした部分を見透かして「気持ち悪い」と言っていたのかもしれない。もしかしたらなにかの化学療法を受けて、自分でも気付かないうちに透視能力を身につけた人間だったのかもしれない。本当の所を確かめる方法はもうないし、あのおじさんに会うこともないんだろう。全ては自分の中で昇華しなければいけないことみたい。そして僕はまた物事を都合よく整理し、取捨選択をして自我を保とうとするのだ。

余談だけど、僕が「近寄るな変質者!」と言われてるシーンだけみると、僕が完全に変質者側にうつっていたかもしれない。たまたま警官がそこだけみてたら連行されてたのは僕なのかな。。痴漢してないのに電車内で女の子に痴漢扱いされた男性のような状況になっていたかもしれない。もしかしたら冤罪はこうゆう日常から始まるのかもしないなと思った。現実こわい。社会ってこわい。

te939.jpg

The End_939 渋谷 / Nikon F3

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