DATE:2013/10/25(Fri) 12:01 No.1303

「宮脇檀 / 住まいとほどよくつきあう」
学生時代には建築家の本を貪るように読んでいた。
芦原義信、清家清、安藤忠雄、隈研吾、村野藤吾あたりがすごく好きだった。日本人では。
町並みの話とか哲学めいた話も好きだったけど、より好んでたのは住宅作家の設計概念やエッセイ。
その中でとりわけ好きだったのがこの宮脇檀という建築家の書いた本だった。
すでに他界されていて、芸術大学で吉村順三に師事。僕の建築の先生も吉村順三事務所に在籍してたので
当時の宮脇氏の話を聞いたら、あんまり良い印象の言葉が返ってこなかった。なんだったんだろ、あれ。
学生時代の僕はインテリアデザイン科のくせに先生の影響で建築(のようなもの)の勉強をしていた。
それが今では、なんだか何をやっている人なのかよく分からない人になっている。人生って不思議だ。
宮脇氏は混構造(RC造+木造)の作品イメージが強い。そんな住宅に目を輝かして見ていた若かりし頃の僕。
でも、形や納まりなどの前に「生活」というものを分析してて、それがまたすごい洞察力なのだ。
生活においての視線の絡み方や、動作。日本の家の玄関が外開きな理由とか、リビングルームの必要性とか。
斬新な中にも説得力があって、目からウロコは落ちまくっていた。設計資料集も穴が開くほど見てトレースした。
なんで今また読み返したのか。今では建築どころか住宅の設計なんてものから遠ざかった僕ですが
キッチン空間の提案をしないといけない事になり、考えてたんだけど考えられない!思考に慣れって必要みたい。
人間いくら頑張って覚えたものでも使わないと忘れる。それはもうキレイサッパリ!金返せ的に。
そっちサイドの脳みそが完全に冬眠してしまう訳だ。それでリハビリも兼ねて、懐かしさもあって読み直してみた。
そしたらさ、またウロコがボロボロ落ちるわけです。こんなに昔の本なのに現代にも全然置き換えられるのだ。
すごいと思う反面、住宅空間はビジュアルや設備はめっぽう進歩してても、根本はあまり変わってないんだなと思う。
それこそ人と人の関係、人と物の関係。そして物と物の関係(これは野口先生のパクリ)は空間において一番大切みたい。
いくら生活が便利で豊かになっても、そうゆう事が大切にできないのは貧しい事なのかもしれない。
建築家のエッセイですが、文章はすごくフランクで女性的(主婦的?)
宮脇檀はシングルファザーで、娘を一人で育てていた。だから料理の腕前もピカイチ。
だからこそ食卓や台所のありかたについて気付くことが多かったみたい。
そうゆう意味で、建築とか設計とかに関係ない人でもすごく楽しめる本です。ぜひぜひ。

The End_842 多摩川 / Nikon F3
「THE END PHOTO」「PHOTO ARCHIVE」「Trinograph. INTERIOR」「Facebook」