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生まれつきの欠落
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「村上春樹、河合隼雄に会いにいく」

死ぬ事なんて考えないで、楽しく面白おかしく生きた方がいいじゃない。とたまに言われる。
別に僕は死にたい訳ではなく、死の事をよく考えてしまうだけで、それはいたって普通の事だと思っている。
生物は生まれた瞬間から死に向かっていくし、人間だけは自分が死ぬという事を早くから理解して生きている。
だから死を意識して生きていくことはすごく自然な事なのだ。むしろ考えないで生きている方がどうかしてる。

なんで急にそんな事を言い出すかというと、僕は本を読んでいる時に気になった文章があるとメモっておく。
それは引用だったり自分が思った事だったり。これは殴り書きでページのすみに残ってたけど覚えていない。
だから本の内容なのか、自分が思った事かどうかは分からない。でもたぶんなんかあったんだろう。
すごく読む力が必要な本だったけど、深層心理に触れているような感覚で、面白かった。

あらすじというあらすじはありません。タイトル通り村上春樹が心理学者の河合隼雄に会いに行った話。
1995年に行われた対談で「地下鉄サリン」「阪神淡路大震災」そして「ねじまき鳥クロニクル」の話が多かった。
特に阪神淡路大震災は、東日本大震災に通じる所もあって、今とあんまり変わらない感覚で読めた。
こんな僕が意見できるほど浅い話でもないので、読んでいて心に止まった事を書いておこうと思う。

日本人は心的外傷を受けるような衝撃(震災だったり)を「個人」で受け止めるのではなく「全体」で受け止めるらしい。だからその中の個人が神経症的な症状を出すことは少ないらしいのだ。これは良いことと取れがちだけど、症状を出してくる人が少ないということは、がっちり1人で受け止めて悩む力がないという事になる。良い意味では神戸や東北で起こった震災を個人の事だけにせずみんなで一丸となって日本全体で受け止めている。逆を言えば文句ばかりで他人のせいにして、自分では泣いて不満を言うだけの人になる「結局自分で乗り越えるしかない」というふうになかなかならないらしい。責任はみんなにあるんだから「わたしの不幸をなんとかしてちょうだい」となるのだそう。欧米人の場合はあくまで個人で衝撃を受け止めるから、辛くなった人はノイローゼになったり自殺してしまったりする。でもそれを乗り越えると強くなる人が多いそうだ。それもすごい力で乗り越えていくらしい。

この前にコミットメント(関わり)とデタッチメント(関わりのなさ)という話から派生していくんだけどそれが面白い。
日本人は基本コミットの文化で学生紛争の時代なんてコミットの真髄だった。集会をサボると付き合いが悪いといわれた。
個人的な意見を言うと異端になった。ベタベタにコミットしている人間が立派な人間というヒエラルキーが生まれていた。
欧米は「個人」として集団と関わるので、参加するときは参加するというのが成り立つらしい。だからたまにの参加でも意見は言える。面白い。

そして最後にいちばん感銘を受けたこと。
心理療法のひとつに「箱庭療法」というのがあるらしい。砂を敷いた箱の中で色んなミニチュアを使い作品を作ってもらう。そのような表現活動を通じて自己治癒力が働き、癒される。というもの。その作業の中で、すごくきれいな花をいっぱい使った曼荼羅(まんだら)を作った人がいたらしい。でもそれを見てもみんなまったく感動はしなかったので、なんでこういうものを作ったのか聞いたらしい。そしたら「箱庭療法というのは曼荼羅をつくるものなんでしょう?」という返答があった。どこかでそうゆう事を聞いていて「そうでなければならない」と思って作っていたのだ。だからそれはその人の中から出てきたものではないのです。だから感動しなかったのだ。著者はその後一言付け加えてて「自分の中から出てきたものは、やはりみんなものすごく感動してるのです。すごく不思議だけどそこに投入するエネルギーの量というのはどこかで伝わるんでしょうね」だって。

これは本当に納得してしまった。人それぞれ価値観は違うけど、ほとんどの人が「いい!」とう作品ってあるもんな。
それはやっぱり「エネルギー」なんだと思う。僕の近くの人だと絵描きの「いでたつひろ」くんが真っ先に思い浮かぶ。
たっちゃんの絵は、内から出てきてるなあと思うし、エネルギーもすごく伝わる。そしてみんな「いい!」と言っている。
内から出てるエネルギーがあるかないか、作品と対峙した時に僕の心がそれを感じたかどうか、これから意識してみよ。

僕の写真はどうなんだろうかしら、きっとないな。頑張ります。
頑張ってできるものなんだろうか?まあいいや。

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The End_823 平和島 / Nikon F3

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