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時を止めたふりをして。
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「瑠璃 / 本多孝好」

ドラクエ後、次に読もうと思ってた本がすぐ手に入らなかったので、一日だけのつなぎで読んだ。
短編集のなかのこの一作だけ。この話がすごくすごく好きで節目事に何回も読んでいる。
昔、好きだった子とお別れする時に「最後だからなんか渡さなきゃ」と思ってこの本を渡した。
この物語の内容が僕の気持ちを代弁してるような事でもないんだけど、なんかそうなった。

その子がもし読んでくれてたら、きっとちんぷんかんぷんだったに違いない。
物語がどうこうじゃなく、なんでこの本?となるだろう。そのくらい意味のない行動だった。
その時はもちろん冷静にはなれず、単純になにか僕が好きな本を渡そう。ってだけだったんだと思う。
でも今読み返してみると、なんでこの本だったのか少しだけ分かる気がする。少しだけね。

家族全員が海外旅行に行く夏休み、小学6年生の僕は留守番をすることになった。その間は、瑠璃色の瞳をした3つ上の従兄弟「瑠子」が面倒を見に来てくれる事になっていた。瑠子は「破天荒」という言葉がぴったりな女の子で、初日から親の車を無免許で運転し小学校のプールに忍び込む計画を立てる。それに付き合わされる僕と瑠子の成長と喪失の物語。

主人公の「僕」はすごく不器用な人間で、気持ちをあまり言葉に出さない。高倉健みたいだ。
でも自分の中では決まってるものがあって、一本槍のような揺るぎのない気持ちがあるのだ。
それはわざわざ言葉にする事ではなく、そして時間なんかで変わるものでもない。高倉健みたいなものだ。
少なからず僕にも、その子に対してそうゆう気持ちがあったのかな。というと美化されすぎかしら。

女の子の瑠子は、成長する事によって失ってしまう事に悩みながら生きる。いわゆる思春期のひどい版。
皆経験する事だが、子どもから大人になるにつれ、得る物と比べられない程失うものが多く、気が狂いそうになる。
それでもだんだん整理がついていき、ゆっくり平凡な人間になる。それが大人になるということかもしれない。
自分は誰でもなく、ただの普通の人間と自覚していく。そして「うまく」世界で生きていくんだと思う。

しかし整理なんてできない想いというのがある。そうゆう想いはどんなに時間が経っても劣化しないのだ。
でもそうゆうのに素直に正直でいると、なかなか生きづらいのかもしれない。だからうまく隠すんだ。
そして自分でも隠したことを忘れてしまう。瑠子も僕もそれがうまくできなかったんだと思う。
うすうす気付いていたけれど、僕はまだ思春期を卒業できていないという事だ。33歳、思春期真っ盛り。

だけど今思い出してみると、その子にこの本を渡したその頃の自分を、少しだけ好きになれる気がする。
今よりも一日が、一年が、永遠のように長かった頃。もう10年以上も前の話。あれから時間はすごく経った。
郷愁にも似たこの気持ちはこれからも僕の中に残り、忘れ、たまに思い出し、共に生きて行くんだろう。
もう戻れないあの頃を思いだし、懐かしみ、少し後悔する。そんな小説です。また何年後かに読もっと。

関係ないけど僕が一番好きな色は、暗く濃い碧。瑠璃色だ。
でもそれも関係あったのかな。今ではもうわからない。

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