DATE:2012/10/30(Tue) 16:58 No.1070

「村上春樹 / 羊をめぐる冒険(下)」
えー、結果からいうと、もうラストまで一気に読んでしまって、予想とおり読み終えてポカーンとした。脱力。
上巻の時も書いたけれど本当に読む前と読んだ後では、少しだけ違う人になっているんだ。
良いか悪いかではなく、こんな気持ちにさせる小説家なんて他にいるんだろうか。もしいるなら教えて頂きたい。
「ダンス・ダンス・ダンス」が終わった後も村上春樹を読み直してる気がしてる。窪美澄さんの新刊も読みたいんだが。
「美しい耳を持った女」と札幌に着いた「僕」はいるかホテルに滞在する。札幌市内で聞き込みを開始し、星形の斑紋が付いた羊探しをはじめるが、まったく情報にありつかない。そんなとき、いるかホテルでとある写真を見付ける。オーナーに突き止めたところ、いるかホテルの2階には「羊博士」が住んでいるらしかった。そして僕と美しい耳を持った女は、北海道奥地の牧場に向かい、僕たちの旅は終わる。
結構言っちゃうので、これから読む人は読まないで。
奥地の牧場にむかうその途中の道に「不吉なカーブ」というのがある。
そのカーブはなにかこう、不吉なのだ。なんかわからないけど不吉なのだ。羊でさえ怯えるようなカーブなのだ。
その先に牧場があり、屋敷がある。そこで僕は不思議な体験をする。
この「不吉なカーブ」は海辺のカフカの「森」とおなじ効果っぽいな。
カフカ少年は兵隊さんに連れられて森を進み、その先に不思議な街があった。
それとおなじで異世界との接点に使われたのが「不吉なカーブ」なんだろな。
何も言わずに居なくなる耳の美しい女はひとりで不吉なカーブを歩いたんだろうか。
屋敷で一人になった僕に急な来客者がある、それは羊の格好をした羊男。
その羊男が現れてからはもう怒濤のように物語が動き出す。それはもう、すごかったよ。
村上春樹が描く「暗闇」は文章のくせに意志が強く、ねじ巻き鳥の「井戸」と同じく僕を狂わせた。
そしてラスト。僕が出会った人と、僕がした行動は、もうすごく心に残っている。
本当にこの三部作。読み返してみて良かった。
昔読んだ時よりも好印象だった。喪失感も。
いちおうこの後は「ダンス・ダンス・ダンス」に物語は繋がり、今読んでる所だ。
だけどこの「鼠と僕」シリーズはここで終わってるんだろうなあ。と思う。
「ダンス・ダンス・ダンス」がつまらないという訳ではなく、なんかそう思う。
羊をめぐる冒険の6年後の発表だしな。。しかし面白いけどね、それはまた。
本当に村上春樹漬けになりそうで恐い。
国境の南、太陽の西が読みたい。ナットキングコールと雨の小説だった気がする。

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