DATE:2012/08/30(Thu) 11:05 No.1028

「村上春樹 / めくらやなぎと眠る女」
随分前に買ったんだけど読んでなかった。処女作の「風の歌を聴け」をまた読みたくて、でも読み出すと
「1973年のピンボール」「羊を巡る冒険」「ダンスダンスダンス」と村上春樹漬けになってしまうのが
目に見えたので(そうなりたい欲求もあるけれど)とりあえず短編集にしておいた。。
パリから帰ってきた男は村上春樹の短編を、澱の残らない文章だ、と言った。たしか。
相変わらずこの人の短編はこれといったオチもなく、たんたんと語られる。
しかし文字を追っていくだけで、情景がうかび、すんなりと物語の中に入り込める(いつも言ってるけど)
短編に限らず全部そうなのかもしれないが、彼の小説で共通する事は、なにかを失う事。
喪失の物語ということだ。確かに読んだ後、なんだか分からないけど、ポカーンとしてしまう自分がいる。
それは読破感という爽快なものではなく(それもあるけれど)読み手の僕の中のなにかを持っていく。
読む前と読んだ後では、僕は少し違う人間になった気がするのだ。そして僕もなにかを喪失しているのだ。
ねじ巻き鳥クロニクルの時なんて、社会復帰にしばらく時間が必要だった。真っ暗体験も実際やってみたりしてた。
今読んでもそうなるのかな?井戸の底でバット持っちゃうのかな?裏の路地に降りちゃうのかな?
七番目の男から引用
この私たちの人生で真実怖いのは、恐怖そのものではありません。恐怖は確かにそこにあります。それは様々なかたちをとって現れ、ときとして私たちの存在を圧倒します。しかしなによりも怖いのは、その恐怖に背中を向け、目を閉じてしまうことです。そうすることによって、私たちは自分の中にあるいちばん重要なものを、何かに譲り渡してしまうことになります。
村上ラヂオの時に引用した文章に近い雰囲気。かなり好きだ。

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