DATE:2012/08/24(Fri) 12:50 No.1022

「田口ランディ / パピヨン」
スティーブン・マックイーンとダスティン・ホフマンの映画に同じタイトルがありますが無関係。
その映画は大脱走の島版みたいな、すごくすごく長い映画だった気がする。
犬のパピヨンとも関係なく、フランス語で「蝶」または「蛾」の意。
生涯を「死と死にに逝くこと」の研究に捧げた精神科医、エリザベス・キューブラー・ロス。
彼女が残した「蝶」の謎を追い、著者はポーランドの強制収容所跡に向かったりする。
そして帰国後、彼女を待っていたのは、父の末期がんの宣告だった―。死とは、生きるとは、家族とはなにか。
オカルト的な小説を書く人な反面、旅もののエッセイとかすごくおもしろくて、僕の中ですごく印象の良い作家さん。
でも今回のはノンフィクション。チベットでの高山病からはじまる瞑想体験や、
ポーランドの強制収容所を訪れ著者が感じたこと。そして父を看取る時のこと。。。
ロスのみた蝶を追う旅と、著者の父親を看取るまでの旅が、交わいながら進行していく様はもう引き込まれた。
人生は楽しい事ばかりじゃない。むしろ楽しい事なんてほんの少しで、辛いことのの方が多いくらいだ。
その人生の中で親しい人間の死はもっとも悲しい事で、でもその死もいずれは自分にもやってくるものだ。
自分という存在が無くなること。肉体が滅びるということ。想像するとそんな恐いことは他にないかもしれない。
それでも生きる理由。日常を過ごし、最後の時まで生き抜く理由。そんな事に答えなんて無いんだけど
ある一つの答えみたいなものが、この本には少しだけ書いてあったような気がした。
印象に残った一節。
死について考えることは生きること
孤独であることの楽しさを。世界から教えてもらうから。
だって。

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