
「村上春樹 / 夢を見るために毎朝僕は目覚めるのです」
以前に断念した、村上龍の小説を再チャレンジしようと思って、本棚を探してたら目当ての本がなかった。
絶対あるはずだけどない。このテンションを逃したら次に村上龍を読む機会は、何年後になるかわからない。
ということで書店に買いにいった。アマゾンでもよかったんだけど、すぐに読みたかった。もうすぐに。
しかし書店にも目当ての本はなかった。しょうがないから村上龍じゃなくて村上春樹のインタビュー集を買ってきた。
これがまた面白かった。あとがきをいれると580P越えの決して短くない物なんだけど、すぐ読めちゃいます。
インタビュー集なので物語性もないし、読んでてなにがあるかっつったらなにもないんだけど、面白い。
そうゆう風に文章を「ただ読む」ことの気持ちよさって僕にはすごくあって、ストレス発散になってると思う。
文章を読み、それが脳みそを通り、何かを感じ、何かを捨て、何かが残る。なによりもその行為と時間が好きです。
今さら言うな。となりますが僕は村上春樹の大ファンです。だけどこの本で改めて村上春樹ってすごいと思った。
そう思わせる文章は読み始めてすぐにあった。インタビューは1997年で「アンダーグラウンド」刊行後すぐの時期。
後に出る「約束された場所で」という作品の為に、著者がオウム真理教の信者に対してインタビューしてる頃。
※「アンダーグラウンド」は地下鉄サリンの被害者にインタビューしたもの。それは依然未読のまま!
以下引用ー
若い人々には多くの場合「チェッキングシステム」のようなものがまだ具わってません。ある見解や行動が、客観的に見て正しいか正しくないかを査定するシステムが、彼らの中で定まっていないのです。そうゆう「査定基準」みたいなものを彼らに与えるのは、我々小説家のひとつの役目ではないかと考えています。(中略)僕は思うんだけど、物語を体験するというのは、他人の靴に足を入れることです。世界には無数の異なった形やサイズの靴があります。そしてその靴に足を入れることによって、あなたは別の誰かの目を通して世界を見ることになる。そのように善き物語を通して、真剣な物語を通して、あなたは世界の中にある何かを徐々に学んでいくことになります。しかしそのような教団にいる若者たちが実際に与えられたのは、決して「善き物語」ではありませんでした。教祖である麻原は若者にその物語を与え、彼らはその物語のパワーの中に閉じ込められてしまった。麻原はそうゆう強い力を持っていたようです。悪しき力を発揮する物語を与える力を。そういう面で、ことの是非はともかく、僕は彼らに同情しないわけにはいかなかったのです。残念に思わないわけにはいかない。僕らが人々に対して、特に若い人々に対して「善き物語」を十分に与えられなかったことについて。
ぼくはこの文章を読んでえらーく感動してしまった。
あれだけ強烈な個性を出す作家なのに、根幹の部分では小説における社会的義務を考えていること。
そして自分とは直接関係ない事件に対して責任を感じている。ということにえらく心が動いた。
だけどこれは著者だけではなく、社会に関わる大人全員の問題であり、責任の事をいってると僕は思う。
僕ら大人の言動、一つ一つが社会に影響を与えるということを自覚して生きなければいけない。と。
「良い価値観」を与えられる人にならないといけない。これは表現をしてる人に限った話ではない。
会社員も専業主婦も写真家も建築家も教師も高齢者も若輩者も放浪者もデザイナーも誰でもみんな。
でも、じゃあそうゆう物(事)を与えられる為にはどうすればいいのか。そんなことは僕にも分からない。
そうゆう姿勢で毎日を生きるだけでいいのかなとも思う。それは自分の為にもいい事なのかもしれない。
この本の終盤には、聞き手に古川日出男が登場する。これがまた面白かった。
2002年に「中国行きのスロウボートRMX」という村上春樹トリビュート作品を書いていた人。
僕はその時からのファンで「ベルカ吠えないのか?」「サマーバケーションEP」とかすごく好きだった。
この節だけインタビューではなく対談になってた。作家と作家の対談。しかもこの二人。感慨深い。
この本を読んで話題にあがってた作品。特に「アンダーグラウンド」と「スプートニクの恋人」はとても読みたくなった。
特にアンダーグラウンドは村上春樹作品の中で唯一未読の作品なので、自然とテンションは上がっています。
でも村上龍。読まないといけないな。。また億劫になってる自分がいる。とりあえずアマゾンで注文しておこう。
読むタイミングはまたくるであろう。そして僕の本棚は順番待ちの小説でいっぱいになっていくのだ。

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