DATE:2014/02/28(Fri) 10:40 No.1368

「安部公房 / カンガルーノート」
お友達にお薦めされて読んでみました。初めての安部公房体験。
前に違う人に安部公房の「砂の女」を薦められた時、なんだか心動かなくて、結局読まなかったけど、
今回は他の読む予定の本を抜き去り、順番を繰り上げてまで読んだ。
タイトルが村上春樹の「カンガルー通信」っぽかったからか、はたまた少し風邪っぽかったのか!
脚のすねに突然かいわれ大根が生えてきた男は、病院で手当を受けるが、麻酔を打たれ意識をなくしてしまう。気が付けば彼は自走式のベッドに固定され、医者に「硫黄温泉行き」を宣告される。生命維持装置つきのベッドは彼を乗せたまま動き出す。坑道から運河、賽の河原から共同の病院へ。終わりなき旅への末に彼がたどり着いた場所とは。
これはたぶんロードムービー的小説なんだろう。それに「奇想天外」という要素を入れ込んだ物語。
これしか読んでないから、この人の書く作品が全部こんな感じなのかは分からんが、とにかく奇想天外だった!
星新一ほど優等生ではないけど、筒井康隆ほどブラックすぎない。なんともちょうど良い感じでした。
藤子・F・不二雄のブラックSFみたいな。突拍子もないのにどこか現実で、哲学や揶揄めいた表現もあって好きな感じ。
この作品が遺作になってるみたいだけど、意味があるのか無いのか、限りなく「死」を意識した物語になっている。
夢の中の出来事か、現実の事なのか、曖昧な部分をたゆたう主人公の心情が表現されていた。それは生死の境目。
僕もその時になったら分かるんだろうけど、もしかしたら「どっちもそんなに変わらない」と思うのかな。。
きっとこの小説はいちいちの意味が重要じゃなく、雰囲気で感じる小説なんだと思う。
かいわれ大根、硫黄泉療法、ピンク・フロイド、日本安楽死協会、賽の河原など、暗喩めいた表現がいっぱい。
かいわれ大根=腫瘍とか、硫黄泉=黄泉の国とかすぐ分かるものもあったけど、意味不明なものもいっぱいあった。
病床に伏せた著者の心情を殴り書きしたような、でも文章として成立しているのは才能だよな。中島らも的なあれか。。
個人的には神出鬼没の看護婦が好きなキャラクターでした。母との再会の所とかすごい好きだった。
ちょっと僕、安部公房にはまりそうな臭いがするなー。
しかし順番待ちの小説も映画もいっぱいあるし、精力的に片付けたい。けど最近本当に時間がないな。。
というわけで、とりあえず安部公房の他の作品を買っておいて、いつでも読めるようにしておこう。
これが僕の家の書籍がたえず増殖していくしくみです。本とDVDに埋もれて死にたい。

The End_904 渋谷 / Nikon F3
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