DATE:2013/05/13(Mon) 12:28 No.1204

「野沢尚 / 反乱のボヤージュ」
久しぶりの野沢作品。相変わらず見事な描写力ですいすい進んだ。
主人公、坂下薫平は首都大学弦巻寮に住む19歳。個性溢れる人たちと楽しい日々を過ごしていたが、寮の取り壊しを企む学校側が舎監を送りこんできた。その人物、元警察官の名倉は寮内を厳しく取り締まり、現代のぬるく平和ボケした学生に対し鞭を入れる。最初は煙たがられていた名倉だが、真摯な態度や相手に有無を言わさぬ説得力、統率力などをみせ、寮生から慕われだしていく。
おもしろかった。薫平の亡くなったお母さんの話や、生き別れた親父の話。どっちもすごく感情移入したし
寮内で起こったストーカー事件、自殺未遂事件、薫平の恋の行方、そして寮存続をかけた大学側との闘い。
全部おもしろかった、でもいかんせんそれぞれが短い。だから少し薄っぺらさを感じてしまって残念だった。
特に、三島由紀夫を敬愛するど近眼のますみと、薫平の恋の行方はもう少し掘って欲しかった。
最後の大学側との攻防も「僕らの七日間戦争」的なワクワク感はあったのだ。
だけど60Pだけじゃあ盛り上がりにかけたよ。ラストはなんとなく終わってしまった感じだった。
これTVドラマだったらしい。主人公の薫平役はV6の岡田くん、なんかそんな感じだった。
野沢尚はもう亡くなってけど、本だけじゃなくTVドラマもいろいろ見てみたかったな。
物語の大きな流れで「全共闘運動」の話が要所要所で出てくる。
大学側から派遣された舎監の名倉さんは、浅間山荘事件に機動隊として参加していた経歴がある。
隊長の頭を撃った若者に対し憎悪の念を持ちながらも「あの頃の連中は少なくとも地面を歩いていた」と言う。
そして人様に迷惑をかけず、爆弾も作らない現代の若者に対し「ただ漂っている人間」と言う。
僕は学生運動の事に興味があって調べている時期があった。前にも書いたことがあると思うけれど。
器物破損も、内ゲバも、殺人も「革命」の名の下に全てが正当化された時代。ムーブメント。
どこまで行ってもそれは許される事ではなくて、やり方は間違っていたと思う。
でも「時代を変えよう」と彼らは本気で思っていたのだ。そして三島由紀夫と真剣に討論していたのだ。
そこには今の僕らには足りない「意志」があるんだと思う。
平和はすごく良いことだ、しかしだらっとした平和ボケは少し違うような気がする。
時代を変えようと思わなくたっていい。ただなんとなく日々を消化して行くのはどかと思う。
死んだように生きるな。という事だ。そうゆう事書くと、僕のこと理想論者とか暑苦しいとか言うんでしょ。
以下引用ー名倉さんの言葉
私たちは彼らを敵として認知できた。
彼らが迫ってくる時には地鳴りが聞こえてきた。
それに比べてあなたたちは、ただ漂っているだけだ。足音なんて聞こえない。
ダブル・スタンダードを器用に使い分ける、卑怯な若者なんです。

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