
「窪美澄 / アニバーサリー」
彼女の小説は「ふがいない僕は空をみた」から全部読んでいる。ファンと言うより完全な追っかけです。
この新作を読む前、僕は「晴天の迷いくじら」が一番印象深かった。由人、あの人本当にボロボロだったよな。
恋人にふられたあげく、デザイン事務所で忙殺され、鬱になり、事務所は潰れ、カエルも潰れ。今思い出しても酷い。
短編だけど「リーメンビューゲル」も同じくらい印象深い作品。遠雷。傘。そうだ課題やらなきゃいけない。
75歳でマタニティスイミングの講師をする晶子と、有名料理家の母親を持ちシングルマザーになる真菜。世代も境遇も違う女性二人の物語。戦争や震災、終末論や地下鉄サリンなどの出来事と、妊娠や育児、女性の社会的地位とかもういろんな事が書いてある。
今回の新作を読んで、一番印象深い作品になったかもしれない。好きとは言わない。印象深い。いや好きだ。
この小説を読んでいて、感じる事、心が動くことがすごく多かったんだ。ひとつは僕との共通点がすごく多かった事かな。
まず晶子さんは僕の母親よりは10個くらい年上だけど、まあ同世代。そして第二章の女の子は多分僕と同じくらいの年齢。
サリンやノストラダムス。僕も同じ年頃にそんな事があった。あぁそんな風だった。と思い出しながら読んでた。写真も。
そして僕も「世界が終わらずに続いていく、ということにしんどさを感じていた」タイプの人間でした。
晶子の生い立ちは、戦争や流産などあるけど今までの窪さんの小説に出てくる人物の中では幸せな方だと思う。
しかし二章の真菜という女の子の話になると、不幸というかなんかもう不憫でさ。感情移入しすぎてダメだった。
仕事で忙しい母親であまり愛情を注がれなかった。中学受験に合格したらカメラを買って貰う約束の為頑張るが失敗。
それから売春をしてカメラを買うお金を貯めるんだけど、本当に欲しかったのはカメラじゃ、ないよな。
僕のまわりには、今現在育児に奮闘しているお母さんが多い。もちろん大変そうだ。
そうゆう人に是非読んでもらいたい小説でした。男性の僕が思うこととはまた違った感想が聞けそうだ。
晶子の旦那さんの「おれはおまえを尊敬しているよ」という一言。泣きそうになった。僕もいつか使おう。
「どんなにひどい世の中だって、親がいなくたって、子どもは育っていくわよ」ってのもじいさんになった時に使おう。
それと、やっぱり写真はフィルムがいいな。
真菜が家政婦さんの写真を撮った時、おかえしに家政婦さんが少女の写真を撮る。
そして「上手に撮れてるといいねえ」と言うのだ。フィルムだから。すぐみれないから。
写真って「時間」がすごく大きな要素になるんだなあ。なんでもそうか。時間ってすごく大事な要素だ。
前に書いたけど、僕はデジカメを買ってしまったのでお金がない。金欠だ。
節制生活をしているしので小説はもっぱら文庫本を買っている。でも窪さんの単行本は買った。
節制生活中でも、買いたい、早く読みたいと思う作家さんは、今は村上春樹か窪さんしかいないみたいだ。
ドラクエのせいですぐに読めなかったけど春樹前に読めてよかった。新しいの出たらまた読もっと。

The End_736 赤羽岩淵 / Nikon F3
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