
「海辺のカフカ 下 / 村上春樹」
何回も書くけど、20代前半に村上春樹にハマッて、1年くらいかけてほぼ全部の小説を読破した。
でも最後の方は疲れて来てたのかもしれない。そんな時に読んだのが海辺のカフカだった。
正直早く終わらせたくて、難解な文章とかはペロリンと深く考えなかったかもしれない。
だからかな、あまり印象に残ってない作品だったのです。
今回何かのタイミングで読み直してみて、こんなに印象が違うとは思わなかった。
すごく壮大なラブストーリーなのね。佐伯さんとの別れのシーン。
村上春樹の小説で、胸えぐられるのは多いけど、泣いたのは初めて。
「彼女の両手が僕を強く抱きしめる。その指の先が僕の背中に食いこむ。
それは時間という壁にしがみつく指だ。」
細かい内容は読んで貰いたいので割愛します。だけどふたつだけ。
佐伯さんが言うんだ
「私の事を覚えていてほしいの。あなたさえ私のことを覚えていてくれれば
他のすべての人に忘れられてもかまわない」
これ読んだ時に思い出したのが
天童荒太の「悼む人」僕の読書人生の中でも強烈な印象を残している小説。その時僕はこんな事を書いていた。
僕が思うに。死ぬ瞬間、自分が幸せだったと思う為には。
「自分が生きていた事を覚えていてくれる人が居る」という事に尽きる。
だからまだ生きている僕らは、死んでしまった人の事を「忘れない」という事が必要なんだ。
我ながらなかなか良いことを書くではないか。
基本的に同じような事を言ってると思った。でもこの気持ち忘れてた。
改めて忘れないということの難しさを痛感する。
もうひとつ。前回書いたセリフがかっこよすぎる大島さん。
そのお兄さんと主人公の会話。
「言葉で説明してもそこにあるものを正しく伝えることはできないから。
本当の答えというのはことばにできないものだから。」
「そのとおりだ。それで、ことばで説明しても正しく伝わらないものは
まったく説明しないのがいちばんいい」
これ昔、相方のフジ暴が言っていた。
「言わなきゃ伝わらないものは、言っても伝わらない、だったら黙っていた方がいい」と。
すごいなと思い、その事を伝えたら彼自身は言ったこと忘れてた。
最後に。
僕の村上春樹ランキング。一位は今のところ不動だけど、かなりの上位に食い込む作品になった。
それはすごく良いこと。僕はこれをきっかけに村上春樹を読み返す時期なんだろうと思う。
そして同時期にカフカを読んでたデューク東吾くん。いろいろ話せて楽しかったよ。ありがとう。

The End 344_佐野 / Pentax645+Carl Zeiss T* Planar CF 80mm F2.8
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